第3編 国際社会、U字ラインを承認せず

第3編:国際社会、U字ラインを承認せず

(VOV)国際社会はいかなる国の不合理な要求にも反発します。

ベトナム東部海域いわゆる南シナ海の海洋面積の80%を占める中国の「U字ライン」海図の内容と性質に関する評定は沢山ありますが、中国と台湾の幾人かの学者は意図的に「このラインは国際社会に承認されている」としています。台湾の学者らは「これは1946年から出されたこのラインの範囲内にある島々や、岩礁などに対する主権に関する主張を示すものだ」としています。そして、中国の 学者らは「これはベトナム東部海域での伝統的国境であり、中国は地物だけでなく、このラインの範囲内とその周辺にある水域に対する主権をも主張している」 としています。

中国と台湾のこれらの学者によりますと、1960年代前に、ベトナムや、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、および、他の東南アジア諸国はこのU字ラインに反発していませんでした。これはこれらの国々がこのラインとその歴史を承認していることを示しています。また、これはこれらの国々がベトナム東部海域にある4つの群島(いわゆる東砂、西砂、中砂、南砂)に対する中国の領有権を承認していることを示しているということです。

しかし、事実は全く違ったのです。

最初に確認すべきことは、U字ラインが書き込まれた地図が出版された1948年から2009年まで中国は「U字ライン内にある水域が歴史的な水域」としての正式な要求を全く主張しなかったということす。

海洋法に関する第3回国連会議に出席した中国の代表もこのラインに関し、如何なる発表もしませんでした。特に、中国は海洋に関する自国の法律の制定プロセスにもこのU字ラインについて全く触れていません。例えば、1958年の「12海里の領海規定」に関する宣言や、1992年の「領海と領海周辺海域法」、1996年の「領海基本線法」、1998年の「排他的経済水域と大陸棚法」、2001年の「海洋使用管理法」、2004年の「漁業法」などです。

国際法によりますと、国境、国家主権に関する主張や要求は明白で公開しなければなりません。一方的な秘密行動は歴史的領有権に基礎を作り出さないからです。というのは、他の国々は何が発生しているかを知らなかったからです。

ホーチミン市法律大学のホアン・ビェト博士は「ある地図を出版する際には国際社会に公開しない限り、その国の領有権に関する要求とはいえない」とした上で、「中国が2009年までにU字ライン内にある海域に対する領有権を正式に要求していなかったため、他の国々が反発していなかったことは分かりやす い。その『反発していなかった』が『暗黙の了解』とは言えない。それに加えて、国際社会は、中国がU字ラインを盛り込む資料、地図などを発行する毎回、反応 を示してきた」と説明しました。

ベトナム東部海域にある4つの群島に関しては、中国は「国際社会に承認されている『歴史的領有権』を持ち、関連海域と周辺海域を確定するためにU字ラインを定める権を持つ」と主張していますが、これに対しても国際社会は反発しています。

その4つの群島の中にあるベトナムのホアンサとチュオンサの両群島に関しては、1951年9月5日に行われたアメリカ・サンフランシスコ会議で、旧ソ連の要求により、日本はこの両群島を含めた複数の海域と島に対する中国の領有権を認めざるを得ませんでしたが、この会議に参加した51カ国のうちの46カ国が反対しました。

ホーチミン市オープン大学のディン・キム・フック(Dinh Kim Phuc)教授は「当時の南ベトナムの政権のチャン・バン・ヒュー(Tran Van Huu)首相はサンフランシスコ会議で、『今後の疑問と衝突を回避するために、ベトナムはチュオンサとホアンサの両群島はベトナム固有の領土であると再確認する』と正式に発表した。この発表は会議の備忘録に盛り込まれた」と証言しています。この会議からみれば、国際社会はこれまで、多国間合意文書の中にチュオンサとホアンサの両群島を中国の領土として認めていないといえます。言い換えれば、国際社会はチュオンサとホアンサの両群島が中国領であることを承認していません。マレーシアとフィリピンがチュオンサ群島の一部に対する領有権を求めていることも国際社会が中国のU字ライン海図を承認していないことを示しています。

ある国が自国の明確な要求を正式に出す前に、他の国々は反発できません。中国の要求は明確ではないため、国際社会は反発できませんでした。世界の学者らは「中国がU字ライン海図を添付した公文書を国連に送った2009年5月7日はこの海図が正式に国際社会に公表される時点だ」としています。そして、この海図が正式に公開された直後、ベトナムは抗議文書を送りました。この抗議文書は「チュオンサとホアンサの両群島はベトナムの領土である。ベトナムはこの両群島に対し明確な領有権がある。公文書CML/17/2009号と CML/18/2009号の中に出された中国の要求は法律や歴史、実際の面で、基礎と根拠がないため、無効になる」と明記しました。

ベトナム東部海域での紛争と関係のないインドネシアも中国に反発しています。2010年7月8日に、インドネシアは国連に公文書を送り、中国の要求に抗議しました。この公文書は「中国の公文書CML/17/2009号と CML/18/2009号に添付されたいわゆるU字ライン海図は国際法の面で基礎がなく、1982年の国連海洋法条約の規定に逆行するものである」と指摘しています。

フィリピンも2011年4月5日に国連に公文書を送り、中国のこの海図に抗議しました。

アメリカも反発しています。同国のヒラリークリントン国務長官は2010年7月23日ハノイで、U字ライン海図をはじめとする1982年の国連海洋法条約に違反する要求に反対の声を上げました。ジョンズ・ホプキンス大学のマルビン・オット教授は「U字ラインを通じて、ベトナム東部海域の海洋面積の殆どに対する領有権を宣言し、その全域を中国領にすることに対して、いかなる大国も支持できない。アメリカも支持しない。インドも支持しない。EU=欧州連合も支持しない。オーストラリアも支持しない。日本も支持しない。すべての国々が反対している」と語りました。

一方、ベルギーのブリュッセル大学の国際・欧州法律課の課長であるエリック・フランクス教授は「各国の反対行動は国際法を遵守するものであり、法的効力を持つ。このため、中国は他の国に反対してまでもU字ライン海図を使うことができない。期間や時点に関する基準の面から見ても、各国の反発は合法的であるといえる。というのは、各国は中国が要求した直後に、反対の声を上げているからだ。また、『明確な目的』という基準から見ても、各国の行動は合法的であるといえる。というのは、ベトナムと他の国々は中国の行動が法的効力を持つことを防止するという目標を明確に示したからだ」と分析しました。

欧州法律家協会のモニック・シェミリエ・ジェンドロー元会長は「重要なのは他の国々の賛同である。他の国々が同意しなければ、中国はU字ラインに対して合法的な権利がない」と指摘しています。

アメリカのジョン・マケイン上院議員も「中国のU字ラインは事実ではない。この海域は中国領ではなく、国際的海域である」と批判しました。

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リーバーマン米上院議員:「ベトナム東部海域での領有権に関する中国の要求は高すぎた」


ここで強調したい点があります。これは中国が自国の法的文書の中にU字ラインに触れないだけでなく、自国の正式な立場を表明する際にも矛盾を示していることです。

1958年に発布された中国政府の「領海宣言」はその1つの例です。この宣言は「中華人民共和国政府は、中華人民共和国の領海の幅が12海里であると宣言する。この規定は大陸、沿岸にある島々、台湾と付近の島々、および、西砂、南砂など大陸と沿岸の島々から大洋で分離されている島々に適用される」と明記しました。

この宣言をみると、中国はベトナム東部海域にある各群島を「中国の歴史的な海域」に属するものではなく、「大陸と沿岸の島々から大洋で分離されているもの」として承認していることが分かります。というのは、中国大陸内には「大洋」がありえないからです。

それに加えて、中国の「1992年の領海と領海付近海域に関する宣言」や「1996年の領海の幅を確定するための基本線に関する宣言」なども矛盾しています。

中国の学者らは、U字ラインの合法性を証明するため、1957年7月20日に出された領海に対する旧ソ連の要求、1973年10月11日に出されたリビアの要求などを引用しています。しかし、これらの要求は正当なものではないとして国際社会から批判を受けているものです。これらの要求は国際法に前例を作ることができません。

以上出された論点から見ると、ベトナム東部海域の海洋面積80%を占める中国のU字ラインは法的根拠がないと確認できます。中国の国家海洋情報センターの李令華教授も「説得力のある証拠は『実行支配』だ。あなたは『これは私のものだよ』というが、「あなたはこれを管理したことがあるか」、「その管理対象があなたの命令を遵守するのか」、「他の人は意見があるのか」などは重要な質問である。これらの質問に『イエス』と答えることができれば、勝利を収める。南砂群島に関しては、私たちは『イエス』とはいえない」と批判しました。

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